足下の材料                            秋田ふるさとづくり研究所  佐々木三知夫
 最初から結論。地域づくりは人づくり、なんです。これはお題目のようにわれていること。
 でもやっぱり、人ではないでしょうか。
 日本ふるさと塾主宰の萩原茂裕先生は、「ふるさとは子どもや孫への贈り物」とおっしゃる。先生のいわれる人づくりとは「心の角度を変えて自分のマチを見れる人」「他人のために汗を流せる人」「足元の材料を耕し直せる人」、そんな人を作っているマチは伸びています、といわれる。
 先年、ギリシャのアテネを訪ねたことがある。アクロポリスの乾いた岩山を登り、白亜のパンティノン神殿を望む右崖下に、露天の劇場が見えた。ディオニソス劇場である。ここで2400年前、様々な劇が上演され、著名な人物が揶揄嘲笑され、大政治家ペリクレスですらそれを免れなかった。華麗な構造物が残っているギリシャの都の美しい街づくりはペリクレスに負うところが大きい。ペリクレスは、我々の都アテナイはギリシャ人の人づくりの場所である。人づくりこそ街づくりの理想であり、政治家の役割は人づくり以外何もないといっている。
ギリシャ人の考えていた人づくりとは、日本風にいって「文武両道においてすぐれたる者、それが立派な人間づくり」である。

 拙書「私の地域おこし日記」(平成4年発行)の帯に「地域おこしは誰にでもできる。先人に学び郷土を深く愛せばいい」とある。
 これは出版社の無明舎出版が宣伝用に考え出してくれた言葉である。「秋田に散った佐賀藩士を今に蘇らせ、モノより人づくりを提起する熱血漢のおもしろ地域おこし奮戦記」
熱血漢といわれるはこそばゆいが、この本は秋田戊辰の役で戦死した佐賀藩士の墓の遺族を探し当て、慰霊祭を執り行い、ご遺骨を佐賀へ届け、秋田に慰霊碑を建立するまでの物語。記録性があり、地域づくりは歴史と人の縁を大切にしたいと書いたものです。
 夕陽が見える日露友好公園が本荘市深沢にあり、中に「露国遭難漁民慰霊碑」が立つ。
 昭和7年12月1日。ここ深沢海岸でロシア・ウラジオストクの漁民ニコライ少年が遭難死し、共同墓地に手厚く葬られた。
60年後の平成3年、ここにニコライ少年慰霊碑建立の話を持ちかけた。最初はなかなか地元の理解が得られない。そこで地元の青年達と、共同墓地跡のカキ殻やゴミを取り除き、一緒に汗を流した。ウラジオストクへ行き、沿海州ラジオ放送に出演しニコライ少年の遺族探しの協力依頼をしたが果たせず、出身地ルスキー島に渡って石を持ってきた。その石は今、慰霊碑の台座にはめ込まれている。
 深沢地区に露国遭難漁民慰霊碑建立委員会が設立され、募金活動が始まったが、当初はなかなか集まらなかった。町内会長が思い悩む。それを見た会長夫人がいった。
「父さん、募金が集まらなかったら田んぼ売ろうか」それから、地元の若妻達もがんばり、募金も集まった。ゴミ捨場が公園になり、慰霊碑が完成した。平成4年12月1日。慰霊碑建立除幕式には地元の子ども達も集まり、ウラジオストクからの来賓達とほほえましい交流が始まった。まさに、ふるさとは子どもや孫への贈り物であった。
 先般、この話を鹿角市で講演した。地域づくりは若妻の力を引き出すことが大事だと。そしたら叱られた。妙齢の女性から若妻でなく、ナイスミディといいなさいと。
地域づくりには三っつの者が大事といわれる。わか者、よそ者、ばか者である。これを最初にいったのは元東京女子大学の伊藤善市教授だと記憶している。私はこの三っつの者にナイスミディを加え、先人の知恵を借りた地域づくりは成功すると考える。
山形県出身の伊藤先生は最近の著書「地域開発の政策課題」で次のような面白いことをいわれている。
「過疎地域を活性化させるのに必要なのは『知恵だせ、欲だせ、元気だせ』ということではないだろうか」
過疎化の進む秋田県はどうも、山形と比べても欲がない。デンデンムシムシではないが、ゆったりしすぎだ。知恵はある。欲をだして元気をだそう、である。
人多き人の中にも人はなし 人になれ人 人になせ人(上杉鷹山) 
 地域づくりは人づくりと結論づけられるが、萩原茂裕先生のいわれる人づくりの人に、足下の材料を耕し直せる人とある。

又、つぎのとおり「地域づくりの5段階と成功への16要素」(電力中央研究所)として、最初の段階においても、リーダーありきである。
1 萌芽期 (1) リーダー (2) 基本的な考え (3) きっかけ
 2 模索期 (4) 種さがし (5) プランづくり
 3 立ち上がり期 (6) 組織づくり (7) 技術・人材 (8) コンセンサス
   (9) 資源・労力(10) 資金調達 (11) 販路・PR
 4 成長期 (12) 規模拡大 (13) 地元定着化(14)
 5 発展期 (15) ネットワーク (16) 世代交代

我々人間も地域社会も豊かさを求めて動いて訳で、それは物的豊かさと心の豊かさである。地域の豊かさを求めるために地域づくりがある。人間も地域も、知って学んで創り出すという3段階にある。
 まずは地域を知ること。地域にどんな材料や資源があるかを知ることである。別表のとおり、地域づくりの指標として、秋田県内の69市町村の人、自然、産業、歴史・文化の4つの座標軸をつくり、指標化してみた。
 自然度として、田畑、山林原野、海岸保全地域の面積、産業度は従業地産業就業者数、人間度として秋田魁年鑑に載っている著名人数、歴史・文化度は同じく秋田魁年鑑にある文化施設、社寺・名所史跡の数で指標化する。
 それぞれ4つの座標軸で市町村ランク別の高い順にみるとつぎのとおりである。
 1自然度 @秋田市@鹿角市B鷹巣町C大内町D能代市D五城目町D大潟村D西仙北町
2産業度 @秋田市A能代市A大館市C横手市C本荘市C湯沢市C大曲市C鹿角市
 3文化度 @秋田市A大館市B鹿角市C能代市C五城目町E大曲市
4人間度 @大館市A鹿角市A矢島町C秋田市C東由利町D大曲市

自然度についてみると、秋田市が意外と高く、鹿角市、鷹巣町、大内町とつづく。
 産業度は秋田市が断然高く、大館市、能代市と市部がつづく。
 文化度については、秋田市が高く、大館市、鹿角市、能代市、五城目町とつづく。
 人間度は、大館市が高く、鹿角市、矢島町、秋田市、東由利町、大曲市、岩城町とつづく。
 
地域づくりは人づくりであり、それはふるさとを愛する人をつくること、そして、その地域のいいところを伸ばし、悪いところをなおしていけばよい。
 県内市町村の地域づくり指標化はあくまでも地域の資源、潜在力として数値化したもので、それぞれの高い度数である長所を伸ばし、短所を直していけばとの参考データである。
 足下の材料を明らかにし、耕し直していくのが地域づくりでもある。 
           

秋田県市町村地域づくり指標                   
                    −地域づくり指標の出し方ー

データ名 年 次 出 典 名 発 行 備 考
自然度数(田畑・山林・原野・海岸線) 12年12月現在 秋田県勢要覧 秋田県 毎年12月県統計課発行
産業度数(従業地産業就業者) 7年10月現在 国勢調査 秋田県 国勢調査県統計課発行
人間度数(著名人) 12年9月 01 秋田魁年鑑 秋田魁新報社 毎年9月秋田魁新報社発行
歴史・文化度数(文化施設。社寺・名所史跡) 12年9月 01 秋田魁年鑑 秋田魁新報社 毎年9月秋田魁新報社発行

 「市町村データ」の数値欄に実データを入力すると、偏差値とランクが自動計算されます。
また、市部グラフやその下の表も自動で更新されます。
(「市町村データ」のシートにデータを入力すると、全て自動で算出されてグラフに反映されます。)
@標準偏差の求め方
標準偏差はエクセルのSTDV関数を使って算出します。
A偏差値の求め方
偏差値は次の数式で求められます。
(偏差値)=50+10×(Xi「対象データ」−M「平均値」)÷σ「標準偏差」
Bランク値の求め方
偏 差 値 5段階のランク値 11段階のランク値
標準偏差、偏差値とランクの算出方法

偏 差 値 5段階のランク値 11段階のランク値
〜27.5
27.5〜32.5
32.5〜37.5
37.5〜42.5
42.5〜47.5
47.5〜52.5
52.5〜57.5
57.5〜62.5
62.5〜67.5
67.5〜72.5
72.5〜 10

市町村 自然度 (偏差値) ランク 産業度 (偏差値) ランク 文化度 (偏差値) ランク 人間度 (偏差値) ランク
1 秋田市 16,300 72.5 10 164,744 112.9 10 80 91.0 10 15 65.9 8
2 能代市 11,635 62.0 7 30,257 57.9 7 42 63.7 8 7 51.4 5
3 横手市 5,378 47.8 5 26,929 56.5 6 32 56.5 6 9 55.0 6
4 大館市 9,169 56.4 6 35,482 60.0 7 49 68.7 9 26 85.8 10
5 本荘市 9,246 56.6 6 25,478 55.9 6 27 52.9 6 10 56.8 6
6 男鹿市 7,554 52.7 6 14,054 51.3 5 33 57.2 6 9 55.0 6
7 湯沢市 6,598 50.6 5 20,391 53.9 6 32 56.5 6 9 55.0 6
8 大曲市 5,245 47.5 4 24,768 55.7 6 40 62.2 7 11 58.6 7
9 鹿角市 23,012 87.7 10 19,946 53.7 6 52 70.8 9 18 71.3 9
10 小坂町 3,388 43.3 4 4,085 47.2 4 13 42.8 4 5 47.8 5
11 鷹巣町 14,315 68.0 9 12,050 50.5 5 30 55.0 6 5 47.8 5
12 比内町 7,710 53.1 6 5,268 47.7 5 26 52.2 5 9 55.0 6
13 森吉町 7,209 51.9 5 4,435 47.3 4 10 40.7 3 3 44.1 4
14 阿仁町 8,594 55.1 6 2,262 46.4 4 27 52.9 6 3 44.1 4
15 田代町 5,592 48.3 5 3,381 46.9 4 17 45.7 4 4 46.0 4
16 合川町 5,307 47.6 5 3,805 47.1 4 15 44.3 4 1 40.5 3
17 上小阿仁村 2,680 41.7 3 1,680 46.2 4 10 40.7 3 0 38.7 3
18 琴丘町 5,863 48.9 5 2,970 46.7 4 14 43.5 4 3 44.1 4
19 二ツ井町 4,468 45.7 4 5,782 47.9 5 23 50.0 5 0 38.7 3
20 八森町 811 37.5 2 2,194 46.4 4 12 42.1 3 4 46.0 4
21 山本町 5,835 48.8 5 3,735 47.0 4 19 47.1 4 8 53.2 6
22 八竜町 2,601 41.5 3 3,406 46.9 4 15 44.3 4 4 46.0 4
23 藤里町 2,522 41.3 3 2,125 46.4 4 14 43.5 4 0 38.7 3
24 峰浜村 3,167 42.8 4 1,986 46.3 4 11 41.4 3 0 38.7 3
25 五城目町 10,257 58.8 7 5,499 47.8 5 46 66.5 8 10 56.8 6
26 昭和町 2,620 41.6 3 3,354 46.9 4 19 47.1 4 3 44.1 4
27 八郎潟町 926 37.7 3 3,233 46.8 4 14 43.5 4 10 56.8 6
28 飯田川町 958 37.8 3 2,103 46.4 4 9 39.9 3 1 40.5 3